株式会社一隣堂 代表取締役
(訪問リハビリマッサージの一隣堂・いちりん堂治療院)
北川冬樹さん 平成15年度理療科卒
平成18年に開業した本治療院は、渋谷の駅からおよそ8分のところにある。ここで施術を行うとともに、訪問リハビリマッサージを展開し、寝たきり・関節拘縮等の患者に対して施術を行っている。
院長であり社長も務める北川さんは、平成16年の3月に文京盲学校を卒業し、整形外科や訪問マッサージ勤務での経験を経て開業に至った。
『豊富な経験を仕事に活かす』
北川さんは、大学を卒業したが、視覚障害があるために就職できず、自分自身を見つめ直したいと考え、インド・中東・東南アジアなど計35の国を回るバックパッカーの旅に出かけた。
「極限の生活をする人たちを見て、生きるということについて考えてみたかったんです。ストリートチルドレンとも一緒に過ごしました。戦争も身近に感じてきました。自分は視覚に障害があり、職業選択の自由がないことに悩んでいましたが、彼らにはもっと選択の自由がない!にもかかわらず、そのことを当たり前のように受け止めている!ということも感じてきました。」「治療院を経営していて、たくさんの困難にぶつかります。でも、そんなときストリートチルドレンに出会ったことや、ヒマラヤで迷った経験などを思い出し、それらに比べれば仕事の困難なんて…と考えて乗り越えてこられました。」さらに、「トーストマスターズ」というスピーチクラブで地域の会長を務め、コミュニケーションとリーダーシップスキルを磨き、この仕事に活かしているという。
『訪問マッサージへの想い』
北川さんは、訪問マッサージの業務を中心に、多忙な毎日を送っている。
「以前から、人の死について考えることが多くありました。そういう意味からも、この訪問マッサージという仕事は、患者様の人生の終末を見させていただくという部分が多く、そのことがこの仕事を選んだきっかけの一つになりました。」
「仕事上、重度の患者様をみる機会が多いのですが、それだけに症状が改善したときの喜びは大きいです。自分の腕で結果を出し、信頼を勝ち取るという点が、この仕事のやりがいです。」
『常に患者様の声に耳を傾ける』
「一隣堂」という名前の由来を尋ねた。
「良き隣人という言葉を目にしたとき、これは良いなと思いました。先生とか患者様とかいう目線ではなく、一人の隣人としてお互いをみることができればと思ったんです。」
このような北川さんの考え方・人柄が「常に患者様の声に耳を傾ける」施術につながっている。
『将来の夢』
「マッサージを夢のある仕事にしていきたいんです。そのためには、施術の単価を上げていくことが必要だと思います。それに向け、今新しい集客方法についていろいろと研究し、実践しつつあるんです。」と意欲的に話す北川さん。
「自分が始めたことが軌道に乗り、そのノウハウを使って、この業界全体が良くなると良い。そして、一隣堂を人を育てられる会社にしたいんです。」自分自身のことだけでなく、周りのことも考える北川さんの人柄に触れることができた瞬間だった。